『ファリスの聖女』の成り立ちを、ご説明しますネ。
>まず、『ロードス島戦記』という一連の作品は、安田均さんとグループSNEが、テーブルトークRPGとして製作しました。 ご存知とは思いますが、テーブルトークというのは<設定資料集>をもとに、マスター(主催)になった人物の<導き>にゲーマーが挑む形式で行われます。グループSNEの人気マスターが、水野良さんでした。そこで安田先生が、水野さんに『設定資料から小説化する』ことを勧めたのが一連の小説『ロードス島戦記』です。さらに、小説となっていない部分の漫画化を依頼したのが『ファリスの聖女』です。
>ですから『ファリスの聖女』の原作は、安田均先生&グループSNEの<テーブルトーク資料集>に、小説家水野良先生が追加編集した<設定資料>及び漫画の後に書かれる予定だった<小説の構想>でありました。つまり、原作小説もシナリオも無い<原案設定>という形です。 山田は膨大な設定資料を読み、水野先生の次回作の構想をお聞きして、まったく白紙の『英雄戦争』を<設定資料>に破綻無くのっとって創造し、後に書かれる小説に<繋げる>作業をした訳です。
>大変難しい作業でした。登場する人物は未来だけが決まっており、これから描くべき空白の時には、後世に名を残す『英雄戦争』が行われた事が決まっていました。それには<最も深き迷宮に百人隊が挑んだ事><生き残ったのは六英雄>だった事、一人の<聖女>と呼ばれる者が<名を残さず死んだ事>が決められていました。さらに設定として<ロードス全土の地図><人種と特性><モンスターの種類と特質とヒエラルキー><魔法の種類と系譜><武器、魔法のレベルと性質、ダメージレベルとポイント>など等。こういった<膨大な資料>には、名称と簡単な特徴、レベルやポイントの数字のみが記載されています。
>山田は漫画化する上で、まずロードス世界全土に<風景>を造りました。次に文字(古代文字、古代魔法文字、ルーン文字、種族別文字及び文様)、種族別言語体系(音声、文様)を創作しました。そして、登場するモノ達に<姿形>を与え、魔法には<呪文、歌や詩>を創り、召喚魔法には<ビジュアル>を創造しました。そして人物像を作り、定められた時間経過表にのっとり物語を作り、定められた結果に導いた訳です。
>私の前言を少し訂正すると、『指輪物語』を参考にしたというのは誤りです。ロールプレイングゲームというものが『指輪物語』を大いに参考にしているのであって、設定資料がそれを綿密に<指定>していたのです。ですから『指輪物語』を参考にしたり再読する必要は、山田にはありませんでした。『ドラゴンクウェスト』がそうであった様に、『ウルティマ』や『ウィザードリー』等がそうであるように。良質なRPG、ファンタジーというのは、大地からして<創造>されるものの様です。そして、その世界に生きるものには<歴史>が全てに存在する訳です。その<歴史>に『神話』や『伝承』、『民話』等とともに『指輪物語』が組み込まれているのではないでしょうか? 山田の絵と映画の美術に共通が見られるとすれば、そういった事なのかも知れませんネ。
(文:菜露様 02/03/18)